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2017年5月10日水曜日

“海運級”太平洋戦争の「ルール概要」と「輸送船が主役」の理由

ガダルカナルを攻略しようと思ったら、日本軍は本土からガダルカナルまでA船を並べて重ね、艦隊が出撃するトラックまでB船を並べて重ねる。重ねた枚数がそれぞれ陸軍部隊の戦力となりトラックから出撃できる空母と戦艦のユニット枚数になる。ただし、日本軍は既にA船とB船で16枚の輸送船団ユニット(輸送船団ユニットは表がA船で裏がB船)を使っている。日本の輸送船団は最大24枚しかないので南方から資源を運ぶC船は8枚しか残っていない。日本の資源を維持するためには最低でも12ユニットをC船に割り当てなければならないのだ

 “海運級”太平洋戦争は、「六角形のマス(ヘクス)を並べたマップ」「戦闘はダイスを振って戦闘結果表で確認」という、皆さんが「あー、そうそうこれこれ」とイメージしている典型的なボードウォーゲームの作法でデザインしています。最近のプレイしやすさを重視した作品で採用例の多い「(カードドリブンやイベントカードなどの)カードを使うルール」「点を線で結んだ(ポイントツーポイント)マップ」「エリアで区分けたマップ」などは採用していない、ある意味「古典的」なルールです。
 ゲームはターン制で、1ターンは「増援編成」「配置/移動」「戦闘」「ターン処理」を繰り返して進みます。戦闘処理も標準ルールだけならば「戦闘に参加する駒の戦力を合計した攻撃力」と「ダイスを1つ振って出た目」を戦闘結果表に照らし合わせて、命中した数を求め、命中した数だけ損害の程度を決めるダイスを振るだけです。ルールに慣れてきたら、実際の海戦などで影響のあった要素(索敵や対空戦闘や揚陸船団に対する戦術的攻撃などなど)を少しずつ導入できます。
 太平洋戦争で重要な「補給」ルールも「輸送船団を“並べる”」「輸送船団を“重ねる”」だけで再現しています。物資を送り出す補給源から補給したい陸軍部隊や港湾があるヘクスまで輸送船団ユニットを「並べ」、送ることができた物資量は目的のヘクスに輸送船団ユニットを重ねることで示します。“海運級”では、送られた物資量=目的へクスに重ねた輸送船団の枚数が陸軍部隊の戦力値や港湾から出撃できる主力艦の数(日本軍だけ)になります。
 日本軍も連合軍(特に前進基地「Base Force」が登場する前)も輸送船ユニットの数は限られているため、補給源から遠い目的ヘクスに送ろうとするとヘクスをつなぐだけで輸送船ユニットを消費してしまい送ることができる物資量=重ねることができる輸送船ユニット数は少なくなります。日本本土もしくは米拠点から遠く離れた島を攻略するのが難しいことが輸送船ユニットの数で“いやでも”体感できるでしょう。
 加えて日本軍は、ただでさえ足りない輸送船ユニットを、「陸軍部隊に補給するならA船」「港湾にいる艦隊に補給するならB船」「南方資源を日本本土に還送するならC船」に使い分けなければなりません。陸軍海軍のために輸送船をごっそり「並べて」「重ねる」と、資源を日本に運ぶC船が必要量確保できずません。戦争が終わる前に日本が備蓄している物資が枯渇したら日本は戦争に負けてしまうのです。
 「輸送船の割り当てて陸軍と海軍のお偉いさんが殴りあった」という逸話も「いやそれはむりない話よねー」と一人でも多くの人が納得してこの興味深いボードウォーゲームの世界に足を踏み外しますように。

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